「日曜テレビ秘宝館」ラインナップ
「TVの記憶」というコーナーで、ファミリー劇場放送番組のコラムを連載中の雑誌『昭和40年男』より、今回は「日曜TV秘宝館」のコラムへ出張掲載!更に詳しい情報は本誌をチェック!
昭和40年(〜41年3月)生まれの男性のための情報誌。同世代の活躍を紹介したり、年齢的にそろそろ気になってくる健康面をサポートする記事の他、幼少から青春時代にかけての思い出を掘り下げて世代的ルーツ探る記事を多数掲載。「ノスタルジックな想い出が呼ぶ共感」を「明日を生きる活力」に変えることを命題に誌面づくりに取り組んでいる。
毎奇数月の11日発売・700円。
「昭和40年男」ホームページ:http://www.crete.co.jp/s40otoko/
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知性とアクションを駆使し、
国際的事件に挑む7人の女性。
「画面狭しと暴れまわる美女達。鮮烈に迫るビューティフルアクション」。そんなキャッチフレーズで制作されたドラマが『コードナンバー108 7人のリブ』(以下、『7人のリブ』)である。初放送は76年10月から12月までの毎週火曜夜10時台の1時間で、全13話。制作会社は、58年の国産初テレビ映画『月光仮面』や『シルバー仮面』などを企画制作したことでも知られる宣弘社だ。
ドラマでは、パリに本部がある国際捜査秘密機関の東京中央捜査本部を取り仕切る南條亜紀捜査官(野際陽子)が、私的に雇った部下の立花雅子(ジュディ・オング)、ジプシー・マリ(前田美波里)と共に捜査を進め、そこに彼女たちの指揮命令で自由に動き回る4人の女性が捜査をサポートしながら、チームワークで国際的な陰謀を解決していくというものだ。
お色気ではないシビアなストーリー展開
このような設定を聞くと、ヌードシーンが多くお色気が売りの女性アクションドラマ『プレイガール』(69年放送開始/東京12チャンネル)や、3人の女探偵が活躍する70年代後半の海外ドラマ『チャーリーズ・エンジェル』(日本テレビ系)、サイボーグ化された女性が主人公のSF海外ドラマ『地上最強の美女バイオニック・ジェミー』(日本テレビ系)といった作品を思い出す読者も多いのではないだろうか。いずれも、それまでの「警察もの・刑事ものは男性主役が当たり前」といった固定概念を軽々とひっくり返してくれる爽快な作品だった。
『7人のリブ』も、同じような感覚にさせてくれる作品なのだが、第1話や第2話だけでも決定的に違うところがあった。それは、“お色気”を売りにしていないことだ。前出の海外ドラマでもヌードこそないが、水着シーンがあったり着衣の露出が多いなど、大人の男性視聴者を強く意識していた。子供とはいえ10歳を超えた男子にとっては、そういう番組だからこそ覗いてみたい気がするわけだが、一方で親からの視聴禁止令につながるハードルともなる。
しかし『7人のリブ』は、登場人物たちがミニスカートで登場するわけでもなく、男性を誘惑して証言を引き出したりもせず、情報を冷静に分析しながら解決へ結びつける(ただし、ゲスト側のベッドシーンが出てきたりはするが)。とはいえその分というか、女性ならではの華麗さを感じさせるアクションシーンは多く、高度な運転テクニックや中国拳法の他、元スケバン、スタントマンといったキャラクター設定を活かしたアクションも次々と披露されていく。
さらに各話のストーリーは壮大でありつつシビアなものが多く、第1話には国際的なスパイが暗躍して冷酷ともいえる展開があったり、第2話では、いきなり飢餓で苦しむ子供たちのニュースフィルムから始まり、その国の独裁者を打倒しようとしている活動家を狙う組織を探り出し、命がけでその人物を守ったりする。
「ウーマンリブ」から付けられた「リブ」
このように登場人物もストーリーも、ある意味で男性的でハードボイルドな雰囲気さえ漂うが、タイトルにある「リブ」という2文字にこそ制作意図が込められているような気がしてならない。そもそも、この2文字と70年代を組み合わせた時、真っ先に浮かぶのは「ウーマンリブ」という言葉ではないだろうか。60年代にアメリカで始まったとされる女性の差別撤廃などを訴える運動のことで、日本でも盛り上がり、70年には流行語ともなった。子供だった我々にも強い記憶を残し、“ちょっと強い女性たち”がテレビで政治的な発言をしていると、「こういうのがウーマンリブか?」なんて真の意味もわからず思ったりしていたものだ。
当然、世相に敏感なテレビ業界が、そんな動きを放っておくはずはなく、だからこそ本ドラマが企画されたであろうことは大いに推測される。事実、出演者の一人であるジュディ・オングは雑誌のインタビューの中で、タイトルのリブはウーマンリブから来ていると語っている。ウーマンリブの本質はともかく、こうした時代状況を意識したからこそ、制作側も登場人物を純粋に生き生きと活躍する存在として描こうとしたのではないか。そう考えると、お色気度の低さや国際的な物語展開も大いに理解できる。
本作は女性たちが活躍するアクションドラマを基本としつつも、時代の変化や空気感を強く反映したドラマだったといえそうだ。女性の活躍が盛んに言われる昨今だからこそ、このドラマを通じて当時の雰囲気を感じ取ってみたい。(文:舘谷 徹 構成:『昭和40年男』編集部)
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