愛の迷宮

名家の娘・文香は、鮎川コンツェルンの次男・光男と結婚する。見合いの席で一目惚れした光男と結ばれ幸福の絶頂の文香には、光男の裏切りなど知る由もなかった。新婚旅行から戻ると、光男は文香に無関心になり…。

別荘で、光男に愛のある結婚生活がしたいと訴える文香。だが、お嬢さん育ちの文香に子供を産む以外何ができるのかと蔑まれ、強引に体を奪われる。光男が帰京した夜、湖畔を歩く文香は偶然、航太と再会し…。

光男と可奈子の深い関係を知った文香は、いたたまれずに実家へ帰る。しかし、父親の秀夫から光男を信じるよう説得され、追い返される。気がつくと別荘のある湖へ来ていた文香は、航太に声をかけられ…。

航太の妻・祐子が文香の身の回りの世話をすることに。文香は祐子に嫉妬を感じるが、祐子が航太との結婚生活に失望しているのを知り、複雑な気持ちになる。数日後、文香はマキに連れられ、婦人科の検査へ行く。

湖で航太に助けられた文香は、胸に秘めていた航太への思いを告白し、一度でいいから愛する人に抱かれたいとすがりつく。離婚する決意で鮎川家へ戻った文香だったが、秀夫が倒れたという知らせが届き…。

愛する航太と一夜を過ごした文香は、その思い出を胸に引き止める航太を振り切り鮎川家へ戻る。朝帰りをした文香の前に、可奈子が立ちふさがる。一方、文香への思いが止められない航太は、祐子に離婚をきりだす。

文香と航太が会っているのを目撃した可奈子は、2人が親密な関係だと光男に告げ口するが光男は全く信じない。そんななか、航太は文香を諦め、祐子と別荘へ帰る決心をする。文香は航太への思いを封印するが…。

航太が鮎川家を去って2カ月後、文香に妊娠の兆候が現れる。まぎれもなく航太の子供だと確信し、蒼白になる文香。思い悩んだ文香は母親に真実を打ち明ける。母はその子を産むことは許されないと言い聞かせ…。

文香の妊娠で鮎川家は幸せに包まれる。そんななか、光男からも別居をきりだされ、孤独感を募らせる可奈子は、文香のお腹の子供の父親は航太に間違いないと口走ってしまう。怒った光男は可奈子を殴りつけ…。

文香が自分の子を妊娠したと思った航太が、入院中の文香に会いにくる。航太の子ではないと文香は主張するが、航太は聞き入れなかった。そこへ光男が入ってきて、文香をめぐり航太と光男がいがみあう。

航太への復讐から、光男が祐子に乱暴する。傷ついた祐子を抱きかかえ別荘へ帰る航太。1カ月後、文香の出産が迫り、生まれてくる子供への疑念が消えない光男。そんななか、祐子が自分の妊娠に気づき…。

文香が男の子を出産。航太の子供ではないかと苦しんでいた光男も、赤ん坊を抱き言いようのない感動がこみ上げていた。その頃、航太と祐子は光男が暴露した文香のことで夫婦の亀裂ができてしまい、祐子が自殺を図る。

別れの挨拶に来た航太に、拓真を一度だけでも抱いてほしいと、文香は赤ん坊を差し出す。躊躇いながらも、愛しさのあまり、赤ん坊に手を伸ばす航太。だがその時、猟銃を手にした光男が現れもみあいに…。

10年後。養護施設で暮らすゆりあはある日、湖畔で絵を描いている少年と知り合う。鮎川家では、再婚した光男と可奈子たち家族が別荘で休日を過ごしていた。恵理香の発言から、光男は拓真に本当の母親のことを語る。

白いカーネーションをもらった少年が、自分が憧れていた別荘の住人だと知り驚くゆりあ。そのうえ、少年には母親がいることがわかりショックを受ける。一方、鮎川家では拓真は可奈子に愛されていないのを感じ…。

拓真は少女が落としていったペンダントを届ける。それは母の形見だと言う少女に、自分も今の母は実の母親ではないと告げ友達になる。一方、可奈子と折り合いの悪い恵理香が拓真の実の母親に関する秘密を暴露する。

拓真は文香に関する秘密の真相を光男に問いただすが、あくまでも否定する光男。家を飛び出した拓真はゆりあに会いにいく。拓真はゆりあを別荘へ連れていき、夜になっても東京へ帰らずにいたが、そこへ光男が現れ…。

ゆりあが養護施設「ひだまりの園」を出て14年。24歳になったゆりあは働きながら建築専門学校に通っていた。一方、鮎川家では拓真がアメリカから帰国。コンツェルンの部長として社長の光男をサポートしていた。

カフェバーに来た男は、ゆりあの胸のペンダントを見てはっとする。ゆりあは鮎川コンツェルンが主催する住宅設計コンクールに応募することに。それは、グランプリを取ったら拓真に会えるかもしれないと期待があった。

拓真との再会を夢見て、ゆりあは鮎川コンツェルン主催の設計コンクールに応募する。だが、審査結果発表の日、入賞を知らせる連絡は届かなかった。そんななか、拓真は応募作品の中にゆりあの名前を見つけ…。

グランプリを受賞したゆりあは、胸をときめかせて授賞式に出席。しかし、ギャラリーにいた鼻持ちならない男が拓真だとわかり驚く。自分のことを覚えていないかと問いかけるゆりあに、拓真の返事はそっけなかった。

自分の生い立ちをマスコミにもらしたのは拓真だと思い、ショックを受けるゆりあ。そして、ゆりあの出生に関する記事が雑誌に掲載される。そんなゆりあに好意を寄せる春樹は、自分の家に遊びに来るよう誘うのだが…。

ゆりあがコンクールで受賞した作品が次のコンペで使われることになり、打ち合わせをする拓真とゆりあ。スタッフは拓真の表情の明るい変化に驚く。そんななか、光男が拓真と熊沢建設の社長令嬢との見合いを企てる。

鮎川家の複雑な家庭事情を垣間見たゆりあは、拓真の屈折した心に思いを馳せる。熊沢建設との縁談を壊した拓真は、自力でコンペを勝ち取ってみせると光男に断言し、ゆりあの作品に無断で手を入れようとする。

コンペのためにゆりあが全精力を傾け描き直した作品が拓真に認められ、喜ぶゆりあ。その日、拓真に無断で光男が世界的なデザイナー・木島を設計室に連れて来る。反発する拓真に、光男は木島に任せろと命令し…。

ゆりあのしているペンダントを見て過去の記憶が蘇った光男は、ゆりあの素性を徹底的に調べさせる。拓真が自分の作品を選んだことに不安になっていたゆりあが春樹に相談すると、拓真の話はやめてほしいと言われ…。

コンペに不安を抱くゆりあに対し、ゆりあのデザインを選んだ理由を語り励ます拓真。拓真の温かい視線に見守られ、ゆりあはクライアントの前でプレゼンをする。一方、可奈子は光男と拓真のDNA鑑定を決意する。

コンペの結果が拓真のもとへ知らされる。ゆりあの設計は落選と決まる。拓真を手放したくない光男は降格を撤回する。春樹から、拓真はわざとコンペに負けたと聞かされたゆりあは、拓真に本当の気持ちを尋ねるが…。

拓真への一方通行の思いに耐えられなくなったゆりあは辞表を提出。傷心のゆりあに声をかける恵理香。恵理香は拓真に、航太の住所を書いたメモを渡し、過去に向きあわない限り、誰も愛することはできないと忠告する。

可奈子が依頼したDNA鑑定の結果が届く。果たして、光男と拓真の間に血縁関係は認められなかった。思い通りの結果に、ほくそ笑む可奈子だったが、春樹が拓真のサンプルと自分のものをすり替えたことを告白し…。

ゆりあに抱きしめられ心が生き返った春樹は、ずっとそばにいてほしいと頼む。ゆりあが帰宅すると、拓真のメモがあった。数日後、カフェバーを訪ねた拓真は、メモで紹介した新しい就職先の話を切り出すが…。

ゆりあに湖の絵をプレゼントした春樹は、彼女が大切にしていた拓真の絵を預かる。その頃、光男が可奈子が隠していたDNA鑑定の書類を発見。結果を見た光男は辛そうに目を閉じる。一方、恵理香がゆりあに会いに来る。

誰も愛そうとしない拓真を忘れられないゆりあ。そんなゆりあへの片思いに苦しむ春樹。春樹の初出勤の朝、拓真も春樹も私の大切な息子だと切り出した光男は、2人で会社を盛り立てていってほしいと期待を寄せ…。

母の過去を知る決意をした拓真に、どんなことがあっても待っていると告げるゆりあ。拓真は光男に母が殺された理由を尋ねるが、自分が悪いと答えるだけだった。拓真は町工場で働く航太に会いにいくことに。

航太に会い自分の過去に決着をつけた拓真は、ゆりあに愛を告白し、光男に結婚したい人がいると切り出す。光男は心から喜ぶが、可奈子は航太が拓真を利用して鮎川家を陥れようとしているのだと勘ぐってしまい…。

ゆりあにプロポーズした拓真は、結婚相手を紹介したいと光男に申し出る。だが、相手がゆりあだとわかった途端、光男は彼女だけはだめだと反対する。それでも、拓真は家族の前で、ゆりあとの結婚を発表する。

光男から手切れ金を渡されたゆりあは、光男の気持ちを酌んで拓真に別れをきり出す。一方的に指輪を返したゆりあは光男の小切手を破ろうとするが、久美子が取り上げ、光男の卑劣なやり方を拓真に暴露し…。

拓真に家族を捨てさせたくないゆりあは、拓真にきっぱりと別れを告げる。拓真を不憫に思った光吉はゆりあと話し、自分が責任を持って、光男に2人の結婚を認めさせると約束する。だが、光男は頑なに反対し…。

光吉が吐血して倒れる。胃の悪性腫瘍で余命3カ月だという。死期を悟った光吉は、ゆりあを鮎川家の嫁として認め拓真と幸せになってほしいとゆりあに語りかける。光吉の病状を考え、拓真は挙式を急ぐのだが…。

死の床にある光吉から、苦悩の理由を聞かれた光男は号泣。拓真が文香と航太の子供であることを打ち明ける。そして、拓真とゆりあが異母兄妹であることも…。間もなく、家族に見守られながら光吉は息を引き取る。

航太が父親だと告げられたゆりあは、精神的に不安定になり入院。拓真への罪の意識から、自殺未遂を起こす。拓真がゆりあの病室に入れないなか、春樹は可奈子の止めるのも振り切り、ゆりあの見舞いに行くが…。

ゆりあと別れ苦悩する拓真に、恵理香が自分の思いを告白。2人は互いの孤独を埋めるように体を求め合う。恵理香は拓真と深い関係になったことを可奈子に告白し、拓真と結婚することを宣言するが…。

祐子が光男の前に現れ、ゆりあは光男の子だと告げ、光男に父親を名乗ってゆりあを引き取ってほしいと迫る。ゆりあを守るために、真実を白日のもとにさらすと裕子は言い切る。ゆりあは再び、航太に会いにいくが…。

恵理香から、拓真と結婚することを告げられたゆりあ。ゆりあに過去を詮索されたくない光男は、ゆりあに留学話を持ちかけるが、ゆりあは航太が会ってくれるまで毎日のように航太のアパートへ通うことに。

航太が何か重大なことを隠しているのを感じたゆりあは光男を訪ね、航太は本当に自分の父親なのかと問う。祐子が産んだ子供に間違いないと答える光男は、自分の前から消えてほしいとゆりあに頼むのだが…。

春樹は光男の子供ではないと告白する可奈子。可奈子の過ちを許せない光男は、鮎川家を出ていくよう可奈子と春樹に言い渡すが、可奈子が1人で鮎川家を出ていく。その夜、光男はゆりあのカフェバーを訪れる。

可奈子が街で偶然、祐子と再会する。「私は光男を許さない」と語る祐子に疑問を感じる可奈子。航太のアパートを訪ねた祐子はゆりあと偶然会う。母親と名乗ることもできず、祐子は逃げるように部屋を飛び出す。

レイプによって生まれたことを知ったゆりあは、光男を父と認めることを拒絶する。光男の病室で顔を合わせた可奈子と祐子。可奈子にゆりあの出生のことを打ち明けようとする祐子を制し、光男は自らの過ちを告白する。

鮎川家に戻った可奈子に励まされ、光男は父親として、ゆりあに会いにいく。24年間ゆりあを放置していたことを謝罪した光男は、ゆりあの面倒を見たいと申し出るが、自分には親と呼べる人はいないと拒絶され…。

雑誌記者の柏木が、光男の隠し子を暴露する記事を拓真に見せる。それがゆりあだと言われ衝撃を受ける拓真は、光男に事実を確かめるが、頭ごなしに否定される。納得できない拓真は航太を追及するが…。

航太から、実の母親・祐子の居場所を教えられたゆりあだが、1人で生きていくから関係ないと言い聞かせる。一方、拓真は恵理香との結婚を白紙に戻し鮎川家を出ていく。恵理香は、拓真とゆりあの仲を邪推し…。

拓真との結婚がだめになり逆上した恵理香が、航太をナイフで刺そうとする。止めに入ったゆりあがけがをしてしまい、病院へ運ばれる。ゆりあは駆けつけた拓真に、恵理香を大切にして鮎川家へ帰ってほしいと訴える。

航太を訪ねてきた祐子が心臓の発作を起こし、手術が必要に。拓真は祐子の病気をゆりあに知らせ、一緒に病院へ来てほしいと頼む。自分の命がもう長くないことを悟った祐子は、ゆりあのことを託したいと拓真に語り…。

病室から姿を消した祐子を探し出した拓真。ゆりあのいた施設の前で倒れていた祐子は意識不明で、一刻も早く手術が必要だった。ゆりあは医師から手術の承諾書を渡されるが、費用に3000万円かかるという。

祐子の手術のためにお金を貸してほしいと光男に土下座して頼むゆりあ。だが、会社を守るためにスキャンダルを恐れる光男は背を向けてしまう。ゆりあのために春樹が銀行から500万円借り、拓真が3000万円を用意する。

手術の決まった祐子に、24年前なぜ自分を捨てたのかと問うゆりあ。だが、祐子はゆりあを傷つける答えをして、手術を受けるのを拒む。祐子の手術の日、ゆりあは手術室の前で祈るような気持ちで待ち続ける。

体調を崩した恵理香が旅行を取りやめることに。祐子を母親として受け入れることができたゆりあは、祐子と一緒にいられる今の幸せをかみ締めていた。そんななか、ゆりあに医師からの残酷な宣告が…。

自分の死期を悟った祐子が、ゆりあのことを光男に頼みにくる。駆けつけたゆりあの手と光男の手を重ね、2人の和解を願う。ゆりあに湖へ連れていかれた祐子は拓真を呼び寄せ、拓真にゆりあを託したいと訴え…。

ゆりあは可奈子から恵理香の妊娠を知らされ、拓真には近づかないでほしいと頼まれる。だが、拓真は恵理香に、お腹の子は諦めてほしいと切り出す。恵理香は子供を諦める決心をするが、可奈子は産んでほしいと訴え…。

殺人の罪に苦しみ、我が子を葬ろうとしている拓真のために、ゆりあは25年前の事件について、航太に聞きにいく。だが、航太は口を閉ざす。その帰り、ゆりあは思いつめた様子で病院へ入っていく恵理香を目撃し…。

鮎川コンツェルンの乗っ取りをたくらむ梶原の部下として、春樹が光男の前に現れる。鮎川家と絶縁した春樹の、光男への復讐が始まった。一方、恵理香は想像妊娠だったことをゆりあに告白し、フランスへ行くと告げる。

梶原から、春樹が梶原の息子であることを知らされた可奈子。衝撃を受ける可奈子に、自分の妻にならないかと誘う梶原。鮎川コンツェルンが梶原の会社に吸収合併されるとの記事を見たゆりあは、拓真に会いにいく。

春樹の画策で社長の座を追われることになった光男。全てを失った光男の前に、25年前の真実を明らかにするため、ゆりあが現れる。何も答えようとしない光男に、ゆりあは自分は鮎川光男の娘なのだと告げる。