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― 収録終わられてどうでしたか?
山口:面白かったですねぇ。大槻さんとかノリが良いですし(笑)でもやっぱり語り足りないところがあるかなぁって部分もありますね。
― 山口さん御自身が村系都市伝説に触れたきっかけを教えて頂けますか?
山口:それはもう、子供の頃から変な人がいっぱい居ましたからね(笑)。サンカの子孫やもろにサンカ世代の人も居て、そういう人が山から下りてきて町はずれに住まわされていた。
外で靴を脱いで玄関を開けて入ってみると、もうそこにサンカの一族が住んでいるんですよ。友達だったから遊びに行ったんだけどね、開けたら畳で、家族が「いらっしゃい」って言って爺ちゃん婆ちゃん兄ちゃん姉ちゃん皆座っているんだよね。その中を「こんにちは」なんて言って入っていくんだよ。うちは代々大阪で僕だけが地方で育っているからあまり偏見とかないんだよね。だから平気で一緒に仲良くなって遊んでいて、なんか不思議でしたよね。
― 入って急に部屋があるのですか?
山口:一部屋と風呂とベッドくらいしかない。1Kかな?もうプレハブ小屋みたいなところに山から下ろされて住んでいましたよ。元々そういうのは炭焼きとか林業従業者とか山に住んでいる一族で。そんな家が普通にありましたね。そういう子たちが普通に勉強して大学行ってサラリーマンになって父ちゃん母ちゃん引き取って、そうやってどんどんどんどん現代人になって行くって感じですね。
― そういった経験が今されているお仕事にリンクしているのですか?
山口:ええ、そういう事なんですね。そういう記憶があるのは僕ら40代。大槻さんも40代で同い年ですけど、都会っ子は知らないんですよね。僕今年で46ですけど、40代半ばの地方出身者が35、6年前に見ている形が残像となっているのかな。僕が30過ぎくらいの時からこういう話が出て来ていますから。 30過ぎになってふと振り返ったら「そういや、山陰から何キロも走って山奥の村に行ったっけなぁ」みたいなね。僕が住んでいたところは県庁所在地で町だったんですけど、ちょっと自転車で走れば村に行けましたからね。その地方都市の周辺部分には遊んじゃ行けない地域があって、その中にはやっぱり日本のリアルな姿があったかな。
― ノスタルジックですね。
山口:そうですね。だからそういうのを振り返ろうという時代に今来ているのかな。都会っ子はALWAYSの世界ですよ。僕らは村系都市伝説。都会っ子にとってはお化け煙突、そういう事を江戸っ子の友達とか言いますからね。でも僕らはガチで妖怪ですからね(笑)
― その差はすごいですね(笑)ちなみに、今日お話頂いた村系都市伝説というのはお持ちの都市伝説のほんの一部だと思うのですが、全部でいくつくらいお持ちなんですか?
山口:村系都市伝説だと恐らくそのうちの200、300くらいかな。
― すごいですね。その中で一番お気に入りの村系都市伝説を聞かせて頂けますか。
山口:そうだね。この前いちばん怖かったのは、他局ですが狩野英孝さんと「行くと死ぬかもしれない肝試し」というのに出たんですよ。それでね、関西の山奥に、戦後流行ったある新興宗教が作った神社があるんですよ。そこに行ったんです。で、うちの事務所の霊能者のあーりんさんという人が、「頭が膨れあがった子供と女の人の霊が見える」と言い出して、狩野英孝さんとアンタッチャブルの柴田さんと僕が居て、「そんなわけねえじゃん」なんて言いながら奥に入って行ったんです。みんな気持ち悪がって見ないんですよ。だけど僕は全然大丈夫だから入って中を開けて。そこでなんか落ちていますよって言ったらそれがアルバムだったんです。それをパラパラっとめくったら親子が出てきて。霊能者が「その人たちです」と。
― 怖いなぁ(笑)
山口:何が怖いかっていうとね、屋上の方に行くと本殿の跡地があって、石碑があってね。宇宙太古神みたいなものを祭ってあるんですよ。「うわ、これ恐ろしいなぁ」って言っていたら、霊能者が「祭られている狐がドンドンドンドンドンと床を踏み鳴らして、自分たちの家来を呼んでいる」と言い出したわけ。また怖い事言っちゃってと思っていたら、麓の方に火がポツポツと灯っているんです。それでいくつもの火が山を上ってくるんですよ。
「うわ、これガチで八つ墓村じゃないか」って話になって、狩野さんが、「山口さんやばいよ。釜とか鍬を持って、おらの村の神社に勝手に入ったな!って刺されたらどうする?」って言うから、とりあえず平謝りで謝りに謝りましょうと話して。そしたらね、プロデューサーが危ないと思ったらしく、先にADを連れて下りて行って話をつけてくれてね。相手は普通の若者なんですよ。奈良県の田舎ですよ、そこに皆で両手に懐中電灯を持って十何人でこう歩いてくるわけだから、光が二十何個もあるわけ。
これはやばい、取り囲まれたと思いましたね。それで若者を見てみたら皆顔色が悪くて、プロデューサーが彼らに「どうして来たの?」って尋ねたら、「今、キツネさんに呼ばれたから来た」と答えるんです。え?となりますよね。さっき霊能者のあーりんさんが、「キツネがドンドンドンと床を踏み鳴らして家来を呼んでる」って言っていたでしょ。あれってこの事?と思ったよ。皆ね、大阪とか兵庫とか関西中から心霊マニアが集まって来てたの。偶然ですよ。
ちなみに、床も何もないところだから、あそこに床はあったのって聞いたら、昔はありましたと。ホームレスが入って火事にしてしまったから、無くなってしまったけれど昔は立派な床があって、立派な金で出来た本殿があったと。霊能者には事前にどこに連れてくとは言っていないから、そういった情報も知らないんですよ。ドッキリで行くからね。それを霊視しちゃうし、霊能者が「キツネが呼んでいる」と言うと本当に関西中からオカルトマニアが集まりたくなって2チャンネルでスレッドを立てるんですって。なんとか心霊スポットに集合、といった風にね。それでパッと集まってきたわけ。キツネにとって、この場所が好きな心霊マニアというのは家来なんだなと思うと、怖くて。
あれほど山間部の神社で怖い思いをしたことはないですね。霊能者の霊視が当たっていたと言う所と、松明に取り囲まれる怖さというか。退路を断たれる恐怖ですよ。
― もう映画ですね。
山口:映画ですよ。だから本当にね、役者さんが落ち武者の村人に殺される様な感じってこんな感じなんだろうなと思いました。現代人だから切りかからないけど、これ戦国時代だったら殺されているなぁと思って。だから怖いですよ。村ってやはり目的のある集合体だから、元々は逃走している連中の集団だったり、山に隠れていたり、源氏に追われた平家だったり、武装集団ですよ。だからやっぱり村って怖いですね。
よそ者に対して過度な警戒があるから山に住んでいるわけですから。オープンな人だったらとっくに麓に下りていますよ。オープンな人じゃない人が代々あそこに住んでいて。だって、四国の山奥に居る平家なんてね、代々源氏を討つことを考えているんですよ。村に入る吊り橋はいつでも切れる様になっている。今でもそうですよ。何故かというと、源氏が攻めてきたらそこを切るからという事を皆言っているんです。
― 今でもですか?
山口:白旗今でも持っているんです。平家の白旗を代々持っていて、源氏と戦うとかって。千年位経っているのにこの人たち何?って思っちゃいますよね(笑)恐らく、四国の屋島の合戦に負けた連中ですね、彼らが四国の山中に居て。同級生にも居ましたよ。それでね、昭和49年頃、僕が小学生の頃に電気が初めて通った。それは徳島新聞に載りましたもんね。
― そうだったんですか。
山口:○○集落に通ったってね。あの辺りの家は源氏の人とは結婚させないですからね。もう千何百年も経っているのに未だにそういう事を言っている連中が居るっていうのが不思議でしょうがないですよね。だからね、犬神とか陰陽師とか、そういう連中が映画の中の世界だけだと思っていたら大きな間違いで、少なくとも僕が子供の頃まではそういう連中が居て、現代人の情報と同時に存在していた。だから、不思議ですよね。
「昨日、猪木対ブッチャー見たかよ」とか言って、「猪木の円陣がキマって勝ったなぁ」とか言っている中で犬神に豹変する。その時はそれが普通だと思って居たけど、東京に出てくるとかなり異常な話だという事が分かりましたね。80年代の大学時代は友達と横に並んで飲みながら話していて、「ああ、犬神憑きなんかしょっちゅうあったよ」なんて言うと皆びっくりするんですよ(笑)
― (笑)
山口:そうなのー?みたいなね(笑)異常だなと感じるものがあったんでしょうね。恐らくね。子孫達は今も残っていますよ。それが都会に溶け込んで今度新たな都市伝説を生み出しているのかなぁという気はしないでもないですね。
― そういった話は、どこか惹きつけられるというか、魅力があるなと僕は思うんですが。こういう話が好きな人っ て村系都市伝説のどういった所に魅力を感じるのだと思いますか?
山口:やっぱりね、日本人の遺伝子に刻まれてる血と能力とバイオレンスメーター。集落の記憶があるんでしょうね。僕ら日本人は皆そういうものを背負ってきているんでしょうね。江戸っていう町だって元々「壊死」した土地で「壊死」するの「壊」に土地で壊土ですからね。放浪の民とか、山の民とか作った江戸ですから。ただ、三代続かないと江戸っ子と言わないというのは、山の民が流入者に対して三代続かないと信用しなかったという事なんです。
江戸っ子ルールというのは山の民ルールなんですよ。家康が京都に対して軍団を作る時に、京都は秩序立った軍団じゃないですか。それで朝廷と戦う為に江戸幕府は流浪の民を日本中から集めた。そうしてアナーキーな人たちを集めることによって江戸幕府は伝統的な京都に張り合おうとした。そういう流れがありました。
― そういった歴史的な事実や裏づけがあるからこそ一層こういった話は面白いのですね。
山口:興味本位の話ではなく、ちゃんとした理論的な考察の出来る話ですよね。
― 最後にですが、この番組をこれから見る視聴者にメッセージを一言お願いします。
山口:「直視せよ」ですね。僕らがバブルの時に蓋をしてしまった、見えないフリをしてしまった、そういった物をもう一回蓋を開けてみようよ、と。臭いものに蓋をして田舎に捨ててきた物というのが村系都市伝説には入っているから。バブルが崩壊して時間が経ちましたが、現在も不況の中で日本人は喘いでいる、そんな中でもう一度自分たちが捨ててきた村を見つけてみろよ、と。日本が先進国の仲間入りをした時に、皆村を捨てて都会に出て、都会で働いて世界と戦った。だからこそ、自分たちの親父とか爺さんたちの背中をもう一回見ろよ、という意味で村系都市伝説を直視せよ、というメッセージを送りたいですね。