STORY ー本伝 第3期ー

第55話「儀式から再び幕は上がり…」

「ヤン先輩の生涯最大の戦果は、今度の花嫁ですよ。これこそ奇跡の名に相応しい」
ダスティ・アッテンボロー

宇宙暦799年/新帝国暦1年、銀河帝国では皇帝ラインハルトの戴冠式が行われ、新たな時代が幕を開けた。一方、ヤンも軍を退役し、フレデリカとささやかな結婚式を挙げた。しかし、動乱の火種が絶えたわけではない銀河系にあって、果たしてこのまま平穏な時代が続いていくのか・・・

第56話「地球へ」

「周りは忘れても地球に住んでる奴らは、かつての栄光を忘れちゃいないのかもしれん」
オリビエ・ポプラン

ユリアンは遙か辺境の惑星を目指して旅をする。その惑星の名は地球。それは人類発祥の地であり、かつては人類社会に君臨し、栄華を極めていた。その栄光を取り戻そうと蠢く勢力「地球教」のルーツを求めて、商船アンデューティネス(親不孝)号に乗り込み、ポプラン、マシュンゴらと共に地球へと旅立つ。

第57話「キュンメル事件」

「僕は何かして、死にたかった」
ハインリッヒ・フォン・キュンメル

マリーンドルフ伯の甥である、余命わずかなキュンメル男爵が、ラインハルトとの面会を希望してきた。それはマリーンドルフ伯、ヒルダ親子の希望でもあり、ラインハルトは面会に出向く。だが、そこにはキュンメルを利用した「地球教」の陰謀が潜んでいた・・・

第58話「訪問者」

「この世で最も卑劣で醜悪なことはな、実力も才能も無いくせに相続によって政治権力を手にすることだ。それに比べれば、簒奪は1万倍もましな行為だ」
オスカー・フォン・ロイエンタール

にわかにメルカッツ提督生存の噂が流れる。それが事実とすれば、ヤン・ウェンリーが知らぬはずはなく、彼に叛乱の意思があるのではないかと、帝国軍の幹部たちは動乱の予感を抱く。一方、ワーレン艦隊はキュンメル事件に対する制裁のため地球に向かっていた。時を同じくして、ユリアンも地球教の本部侵入に成功する。

第59話「過去と現在と未来と」

「我々は敵の堕落を歓迎し、それどころか促進すらしなくてはならないんだ」
ヤン・ウェンリー

未来に思いをはせる者は、過去を知らずに済ますことはできない。ラインハルトは、これまで帝国内で国家機密とされてきたゴールデンバウム王朝の権力闘争の歴史を紐解く。一方、同盟では退役したヤン夫妻の生活が同盟に駐在するレンネンカンプによって監視され、夫妻は息苦しさを感じずにはいられなかった。

第60話「魔術師捕らわる」

「まさか裁判なしで死刑にもしないだろう。ここは民主主義国家だ」
ヤン・ウェンリー

バーラトの和約に基づき、同盟軍は所有が禁じられた戦艦、宇宙母艦を廃棄しようとしていた。だが、ダヤン・ハーン補給基地に潜むメルカッツ艦隊により戦艦は奪われ、それは思いもよらぬ形で同盟政府を追い詰めた。レンネンカンプの内政干渉に抗しきれなくなったレベロ議長は民主国家存続のため、やむなくヤン逮捕に踏み切る。

第61話「歌劇オペラへの招待」

「つまり私は沈みかけた船だということか。それとも同盟政府自体が船で、私はその無能な船長といったところか」
ジョアン・レベロ

ヤン逮捕を受け、シェーンコップ率いる薔薇の騎士連隊は武装決起する。アッテンボロー、バグダッシュも加わり、ヤン解放を求めた。こうした事態を、帝国の高等弁務官レンネンカンプに知られまいとレベロ議長は苦心する。動乱の予感はいよいよ現実味を帯びつつあった。

第62話「血の流水階段カスケード

「あなたのように常に命令を受け、法に縛られてきた人間がそういった桎梏を逃れた時にどう考え、どう行動するか、私には大いに興味がありましてね」
ワルター・フォン・シェーンコップ

シェーンコップ、アッテンボローらにより救出されたヤンは、やむなくハイネセン脱出を決意する。その手段としてレンネンカンプの拉致を計画。そして、薔薇の騎士連隊が弁務官府を強襲した。こうして帝国だけでなく、同盟とも異なる立場をとる事となったヤン艦隊一行の運命は・・・

第63話「聖地」

「慌てるな、地球は逃げはせぬし、奴らを地球の外に逃がしもせん」
アウグスト・ザムエル・ワーレン

ワーレン率いる地球討伐軍であったが、途中、暗殺者に狙われるなど、その道程は容易なものではなかった。また、既に地球教本部への潜入を果たしたユリアンらは、ある出来事をきっかけに行動を起こす。そして、地球教の核心部分に迫ろうとした時、ついに帝国軍の総攻撃が始まった。

第64話「休暇は終わりぬ」

「俺は好戦的な皇帝として後世に知られるのだろうか・・・、だが、今さら生き方を変えられるはずはない」
ラインハルト・フォン・ローエングラム

オーディンに伝えられたヤン逃亡とレンネンカンプ拉致の知らせは、帝国軍の幹部たちの間にも動揺をもたらした。ラインハルトは、レンネンカンプの代行としてシュタインメッツを任命し、レンネンカンプの身柄返還に関しヤンと交渉するよう命じる。だが、発生した騒乱の知らせに、なぜか高揚感を覚えたことをラインハルトは自覚していた。

第65話「すべての旗に背いて」

「最高指導者は文民でなくてはならない。軍人が支配する民主共和制など存在しない。私が指導者なんかになってはいけないんだよ」
ヤン・ウェンリー

補給基地ダヤン・ハーンでメルカッツとの合流を果たしたヤンは、独立を宣言したエル・ファシル自治政府の招きに応じる事をためらっていた。彼は同盟との関係修復を望んでいたのだ。一方、帝国軍は大本営をフェザーンに移し、レンネンカンプの遺体を収容して一連の事件の全貌をほぼ解明した。ラインハルトは再戦か、現状維持か・・・、決断を下そうとしていた。

第66話「黄金獅子旗(ゴールデンルーヴェ)の下に」

「余に居城など必要ない。余のあるところが即ち銀河帝国の王城だ」
ラインハルト・フォン・ローエングラム

フェザーンでの新帝都建設計画が始まる中、ラインハルトは同盟への再進攻を発令することにためらいを感じていた。それは、ルドルフを彷彿とさせる高圧的な形での権力行使に対する抵抗でもあった。重鎮たちが、それぞれの思惑を抱きながら、ラインハルトの決断を待っている中、猛将ビッテンフェルトが放った言葉がラインハルトの心を揺さぶった。

第67話「『神々の黄昏(ラグナロック)』ふたたび」

「わしはヤン提督と違って50年以上も同盟政府から給料をもらってきた。今さら知らぬ顔を決め込むわけにもいかんのでな」
アレクサンドル・ビュコック

宇宙暦799年/新帝国暦1年、11月10日。黒色槍騎兵艦隊(シュワルツ・ランツェンレイター)の出撃と前後してラインハルトの演説が全宇宙に向けて流された。彼は事件の真相を暴露した上で、自由惑星同盟に宣戦布告した。勝つ見込みのない戦いと知りつつも、これを迎え撃つべく準備を始めるビュコックとチュン。一方、同盟への復帰の道を断たれたヤンは、やむなくエル・ファシルへ向かうことを決断する。

第68話「エル・ファシルへ」

「美人局の成功は女性の魅力次第だな」
アレックス・キャゼルヌ

ラインハルトの宣戦布告を受け、同盟との関係修復の道が完全に断たれたことを悟ったヤンは、民主共和制の最後の砦として、またイゼルローン攻略の足掛かりとして、エル・ファシルの反帝国勢力に合流する。旅を終えたユリアン一行や、ハイネセンを後にしたムライらも集結し、新たな戦いの幕が上がる。

第69話「イゼルローン再奪取作戦」

「帰ってきた。居るべき場所へ。共に居るべき人たちの所へ」
ユリアン・ミンツ

ようやくヤンとの再会を果たしたユリアンを加えて、イゼルローン要塞再奪取の準備が進められる。一方、帝国軍はビッテンフェルトを先陣にして同盟領へと突き進み、これを迎え撃つべく、ビュコック率いる最後の同盟艦隊が出撃した。

第70話「蕩児たちの帰宅」

「知者は知に溺れる。ヤン・ウェンリーのカレンダーも残り少ないぞ」
コルネリアス・ルッツ

イゼルローン要塞を奪取せんとする不正規隊の作戦は要塞側に看破されていた。ルッツはヤンの罠に嵌まった見せかけて逆に罠に嵌めようとするが、それこそが不正規隊の仕掛けた心理的な罠であった。情報戦を得意とするバグダッシュの持ち味が遺感無く発揮される。さらに、1年前、要塞撤退時に同盟軍が仕掛けたもう一つの罠が帝国軍に追い討ちをかける。

第71話「マル・アデッタ星域の会戦(前編)」

「老いた獅子と若い獅子とが共に戦いを望んでいる。名誉がそれに彩りを添えることになるだろうが、結局のところ抜かれた剣は血塗られずして鞘に収まるものではないさ」
オスカー・フォン・ロイエンタール

宇宙暦800年/新帝国暦2年、ビュコック司令長官は数の上での不利を補うべく、マル・アデッタ星域の小惑星帯を貫く長大なトンネル状の空間に陣を敷き、地の利を最大限に生かして帝国軍を迎え撃つ。それは、民主共和制を奉ずる国家の最後の栄誉を担う戦いであった。老将の経験豊かな戦術の前に、圧倒的優位な立場にいるはずの帝国軍が思わぬ苦戦を強いられる。

第72話「マル・アデッタ星域の会戦(後編)」

「わしは良い友人がほしいし、誰かにとって良い友人でありたいと思う。だが、良い主君も良い臣下も持ちたいとは思わない。だからこそ、あなたとわしは同じ旗を仰ぐことはできなかったのだ」
アレクサンドル・ビュコック

帝国軍の大艦隊を前に一歩も引かないビュコック艦隊。恒星風を味方につけ、巧みな戦術で応戦する。味方のカールセンらの援護も受け、着実に帝国軍の大本営に迫りつつあった。だが、圧倒的な兵力で襲いかかる帝国軍の前に、ついに力尽きようとしていた。そして、ラインハルトの命により、ミッターマイヤーを通じて降伏勧告がビュコックに伝えられたが・・・

第73話「冬バラ園の勅令」

「奴らが下水の汚泥とすれば、マル・アデッタで死んだあの老人はまさに山の清水であった」
ラインハルト・フォン・ローエングラム

ビュコック、チュンらがあらかじめ差し向けたムライ、フィッシャーらの艦隊がヤン率いる不正規隊と合流し、イゼルローン要塞の兵力が確実に増加していく中、ビュコック戦死の訃報に接したヤンはショックを隠せなかった。宇宙暦800年/新帝国暦2年、惑星ハイネセンに降り立ったラインハルトは2月20日、勅令をもって同盟領の完全併呑を宣言し、ここに自由惑星同盟は、273年に及ぶ歴史の幕を下ろすこととなった。

第74話「前途遼遠」

「愛してもいない女を抱くには、人生は短すぎるだろうな」
ワルター・フォン・シェーンコップ

ラインハルトは自らイゼルローン要塞奪還にあたることを宣言する。圧倒的不利な状況下で孤軍奮闘を余儀なくされるヤン不正規隊は、それでも民主共和制の種をいつの日にか芽吹かせるという希望を放棄することなく来たるべき戦いに備えていた。そんな中、ラインハルトのもとに、「ロイエンタール元帥に不穏の気配あり」との報が届き・・・

第75話「雷動」

「あの夜のことを憶えているか。ロイエンタール元帥」
ラインハルト・フォン・ローエングラム

ロイエンタール元帥に謀叛の疑いあり。ラインハルトからの信頼も厚い厳正な司法尚書ブルックドルフからもたらされたその報告は、帝国軍の内部に重大な波紋を投げかけた。大本営へ出頭したロイエンタールを自ら審問するラインハルト。二人の脳裏に5年前の最初の出会いが甦る。ロイエンタールが忠誠を誓約することと引き換えに、投獄され命の危機に瀕した友人ミッターマイヤーの救済をラインハルトに求めたあの日が・・・

第76話「祭りの前」

「ここに宣言する。余はヤン・ウェンリーを余の前にひざまずかせぬ限り、オーディンはおろかフェザーンにも帰らぬことを」
ラインハルト・フォン・ローエングラム

突如ハイネセンポリスで起こった大火はテロなのか事故なのか・・・いずれにせよ、ロイエンタールが周密に手配していた危機管理マニュアルにより被害は最小限に留まった。その後ロイエンタールへの処分が下り、統帥本部長職は解任されるも旧同盟領の政治と軍事を司る新領土(ノイエラント)総督に任じられた。ロイエンタールはラインハルトに次いで強大な軍を統率することとなる。ただし、その人事はヤン・ウェンリー一党を討って銀河帝国による完全な宇宙統一を成し遂げた後に発効するという条件付きであった。ラインハルトの心は既にヤンとの戦いに向いていた。

第77話「風は回廊へ」

「テロを起こすこと自体は目的ではない。あくまで目的を達するための手順の1つにすぎないのさ」
アドリアン・ルビンスキー

ついに帝国軍は、最大の敵手たるヤン・ウェンリーを討つため、その強大な兵力をイゼルローンへと向けた。そんな中、フェザーンにおいて帝国の要人を狙った爆弾テロが発生した。水面下に潜む様々な陰謀が新帝国に揺さぶりをかける。

第78話「春の嵐」

「宿命の対決なんて無いんだよ、ユリアン。どんな状況の中にあっても、結局は当人が選択したことだ」
ヤン・ウェンリー

宇宙暦800年/新帝国暦2年、4月20日。帝国軍ビッテンフェルトからの降伏勧告がイゼルローン要塞にもたらされた。ヤンらがその対応を協議する中、要塞内には嵐の前のごとく静かな時間が流れていた。決戦を前にヤンとユリアンは夜を徹して語り合う。そして、ユリアンはヤンの苦悩を知るのだった。

第79話「回廊の戦い(前編) ~常勝と不敗と~」

「恐るべきは、ヤン・ウェンリーの知略だ。それと承知していながら、ついに奴の術中に嵌るとは・・・」
アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト

ヤン・ウェンリーはビッテンフェルト率いる黒色槍騎兵艦隊(シュワルツ・ランツェンレイター)を戦いに引きずり込むべく罠を仕掛けた。罠と知りつつ艦隊は、回廊の中へと進軍する。これに伴い、ファーレンハイト艦隊も参戦を余儀なくされ、ついに回廊の戦いの戦端が開かれた。

第80話「回廊の戦い(中編) ~万華鏡(カレイドスコープ)~」

「勝利か死か、ではない。勝利か、より完全な勝利か、だ」
ラインハルト・フォン・ローエングラム

ビッテンフェルト、ファーレンハイト両艦隊が敗戦した帝国軍であったが、ラインハルト率いる本隊が到着すると、圧倒的兵力をもって再び回廊内への進入を開始した。ラインハルト・フォン・ローエングラムとヤン・ウェンリー。常勝と不敗の名将が、ついに全面対決を迎える。

第81話「回廊の戦い(後編) ~大親征の終幕~」

「うちの生きた航路図が、死んだ航路図になっちまった」
ダスティ・アッテンボロー

回廊の特殊な地形を利用し奮戦する不正規隊であったが、物量に勝る帝国軍を前に次第に劣勢に追い込まれていく。激しい戦いの中で双方共に貴重な戦力を失っていき、ついに不正規隊は補いようのない損害を被ってしまう。もはや長時間にわたる帝国軍の猛攻を耐え抜くことはできない状況であった。その頃、帝国軍の内部でも思いもよらぬ事態が起こっていた。

第82話「魔術師、還らず」

「ずいぶんと血が出るものだな。もっとも私が今まで流させてきた量に比べればささやかなものだが・・・」
ヤン・ウェンリー

その時、一つの星が銀河の中で瞬いて消えた。その時、一つの時代が終わりを告げた。ラインハルトとの会談に向かうため、ヤンを乗せた巡航艦レダⅡはイゼルローン要塞を後にした。しかし、その行く手には帝国軍を装った地球教徒が待ち構えていた。今、銀河を揺るがす大事件が起きようとしていた。

第83話「祭りの後」

「あなたは、あなたにしか出来ないことをやればいい。ヤン・ウェンリーの真似をすることはないわ」
フレデリカ・グリーンヒル・ヤン

イゼルローン要塞はヤン・ウェンリーを失った。だが、歴史は変わらずに時を刻む。フレデリカやユリアンをはじめ遺された者たちは、ヤンが歴史に残した足跡を意味あるものにするため、新たな体制を築く。

第84話「失意の凱旋」

「誰も彼も、敵も味方も皆、余を置いて逝ってしまう。何故、余のために生き続けないのか!!」
ラインハルト・フォン・ローエングラム

ヤン・ウェンリーの突然の死は、帝国軍にも重大な衝撃を与えた。大きな喪失感に苛まれるラインハルトは軍を退くことを決意し、長い戦いにも終止符が打たれたに見えたが・・・。

第85話「遷都令」

「虫が食った柱だからと言って、切り倒せば家そのものが倒壊してしまうこともあるだろう。」
アントン・フェルナー

ラインハルトはフェザーンへの遷都を正式に発布した。ヤン・ウェンリー亡き今、人類社会の統一も時間の問題と思われ、誰もが平和の訪れを確信する中、ラングはロイエンタールを追い込むために密かにルビンスキーと取引を行っていた。銀河には依然、不穏な空気が漂っていた。

第86話「八月の新政府(ニュー・ガバメント・イン・オーガスタ)

「この不利な、不遇な状況にあって、民主共和政治の小さな芽を育んでくださる皆さんに感謝します。」
フレデリカ・グリーンヒル・ヤン

ユリアンは、ラインハルトがイゼルローンを孤立させ、その存在価値をなくす作戦にでたことを見抜いたが、それに対する打開策を考えあぐねていた。そんな中、宇宙暦800年/新帝国暦2年8月8日、イゼルローン共和政府は樹立された。「私、フレデリカ・グリーンヒル・ヤンはここに宣言します。」政治的指導者として記念式典会場で演説するフレデリカ。いつかヤンの理想が開花する日を夢見て、共和政府は動きだした。

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